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デフレからの脱却に長い時間がかかり、急速な高齢化が進む中では個人消費もなかなか伸びません。こうした環境が続くかぎり、人件費の増大につながる定期昇給について慎重になる経営者が多くなるのは当然のことです。
しかし、総額人件費をどうコントロールするかという問題と、一般に「定期昇給制度」と呼ばれる給与制度上の昇給運用ルールをどう設計するかという問題は、密接に関連するテーマではありますが、基本的に別問題です。 後者には、定年まで働くことのできる(すなわち、有期雇用でない)正社員が、長期間にわたってモチベーションを維持・向上させるための仕掛けでもあるのです。 会社として、社員の給与を将来にわたってどのように増額させていくのか?これは、雇用の安定確保の面から重要なテーマです。 なぜなら、初任給20万円で採用した大卒新入社員がいたとき、5年後、10年後にどのように給与が増えていくのかを示すことができなければ、その社員を将来に不安を感じることなく仕事に専念させ、わが社の戦力として育て定着させることはできないのですから。 であるにも関わらず、様々な前提条件をいっさい無視して、 「定期昇給は時代遅れだ」とか、 「定期昇給などしていては、会社がつぶれる」 といった発言・提言をする人が結構いたりします。 これが、全くの素人の気まぐれ発言と割り切れればまだ許せるのですが、発言の主がそれなりに名の知れた弁護士や経営コンサルタントだったりするから困ったものです。 年齢や勤続年数といった属人要素だけ、すなわち仕事ぶりの良しあしやスキル・知識の習熟・向上に一切関係ない、「100%年功昇給」ということを想定しているなら、「そんな定期昇給は直ちにやめるべきである」という論証は十分に成り立ちます。 しかし、いまどき100%年功の自動昇給をしている会社がそんなにあるのでしょうか? ここに人事院の民間給与の実態調査のうち「定期昇給制度の状況」というデータがあります。定期昇給について、管理職(課長級)と係員(一般職:非監督者)に分けて調査したものです。 【係員(一般職)】 自動昇給のみ 12.0% 査定昇給のみ 34.5% 昇格昇給のみ 3.1% 自動昇給・査定昇給 9.7% 自動昇給・昇格昇給 4.9% 査定昇給・昇格昇給 20.7% 自動昇給・査定昇給・昇格昇給 15.1% 【課長級(管理職)】 自動昇給のみ 12.5% 査定昇給のみ 37.7% 昇格昇給のみ 2.2% 自動昇給・査定昇給 8.3% 自動昇給・昇格昇給 4.4% 査定昇給・昇格昇給 23.1% 自動昇給・査定昇給・昇格昇給 11.8% ご覧いただいたとおり、8社に1社しか自動昇給のみという会社はありません。 一般職でも、評価・査定によって昇給額に差が出る会社は80.0%、昇格判定にも会社の評価が反映されているとすればその割合はもっと高まります。具体的な方法に違いはあるかもしれませんが、何らかの形で評価・査定した結果を昇給運用に反映させるのは、今日では当然のことになりつつあります。 多くのマスコミに加えて、一部専門家の中にも「定期昇給=年功昇給(年齢や勤続が1つ上がることに伴って給与が上がる)」という論調が目立ちますが、そんな会社はもはやごく少数なのです。 にもかかわらず、十分な現状分析もしないまま、「経営環境の厳しい時に定期昇給などもってのほかだ」というようなことを平気で言う人がいるのです。 難しい環境下で日々努力されている経営者の皆様にとっては、コスト削減、人件費低減を前面に打ち出したこのような提言は時に魅力的に映るかもしれません。 しかし、このような無責任な論調に乗っかり「定期昇給はいまどき時代遅れだ」などと、昇給ルールを廃止したりすれば、将来に不安を感じた優秀で見込みのある社員から辞めていくということにもなりかねません。 定期昇給制度に対する正しい理解は、トータルの人事制度、賃金施策を確立するうえで不可欠です。 次回は、もう少し定期昇給の本質に踏み込んで、検討してみましょう。 賃金管理研究所のFacebookページはこちらから 宜しかったら「いいね!」を押してくださいね。 弊社所長:弥富拓海のブログもぜひご覧ください。 ⇒ 弥富拓海の「賃金正しい決め方と運用の実務」 賃金管理研究所HPはこちら ⇒ http://www.chingin.jp スポンサーサイト
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