プロフィール
Author:賃金管理研究所 大槻幸雄 Facebookページ
最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
最新記事
最新記事
最新トラックバック
最新コメント
|
前回に続いて、定期昇給を考えてみたいと思います。
実は、人事労務管理に関係する言葉には、定義があいまいなまま使われているものが少なくありません。「定期昇給」もその一つだと言っていいでしょう。 まず定期昇給とは何ぞや、というところからおさらいしましょう。 <そもそも定期昇給とは?> 日本経団連の人事・労務用語辞典によれば、定期昇給とは、「毎年一定の時期を定め、その会社の昇給制度に従って行われる昇給のこと。定昇ともいう。」と解説されています。 私もセミナー等でお話するときには、「それぞれの会社で決められたルールに沿って行なう昇給運用のことです。」とお話ししています。春季労使交渉で、「賃金カーブ維持分」という言葉が使われますが、これはその会社の昇給制度にしたがって行なわれる昇給を指すのが普通です。 ところが、新聞などでは「年齢や勤続を重ねるごとに、賃金の一定額が自動的に増える仕組み」という視点から定昇が語られているのです。 恐らく人事担当者でこのような意味合いの「定昇」を使っている方は少ないと思います。しかし、いまだ年功的な賃金制度が巷にあふれているかのような前提(偏見?)のもと、マスコミが定期昇給を語ることも多く、一部の専門家から「定昇は直ちに止めよ」といわれれば、「昇給制度の運用を続けていていいのか?」と疑心暗鬼に駆られる経営者がいてもおかしくありません。 本来の定期昇給という言葉は、必ずしも社員全員の昇給を意味するものではなく、評価が低ければ昇給しない場合もあれば、その等級の賃金レンジの上限に達したためそれ以上の昇給がないという場合もあります。 定期昇給制度は、それが直ちに総額人件費の上昇招くということではありません。採用される社員と退職する社員のバランスが取れていれば、定昇があっても長期的には(会社の従業員規模が変わらないという前提のもとでは)総額人件費が増るとはいえないのです。 もちろん個々の会社を見れば、人員構成上のアンバランスもありますので、退職者がいなければ人件費は増えることになります。また、定期昇給のすぐ前と後で比べれば、100%人件費は増えますが、これをもって「昇給を続けていたら人件費が増え続けて大変なことになる」というのも間違いですね。 確かに、社会保険料率が毎年じわじわ上がり続けていますから、給与総額が一緒でも、総額人件費負担が着実に増えているのは事実です。ですが、この部分については、定昇の問題というよりも一人当たりの生産性をどう増やすかの問題と捉えるべきでしょう。 <もし本当に定昇をなくすとしたら> 前回も述べたとおり、世間並みの学卒初任給で入社した社員の給与は、正社員と言う長期安定的な雇用制度の下で、昇給制度により長い期間にわたって引き上げていくことで、社員のインセンティブを長持ちさせる効能を持っています。 そして、通常は、若年社員から中堅を経て定年にいたる相当な長期間にわたって、給与よりも何倍も高い生産性をあげている(全員ではないかもしれませんが)のが普通ですね。このとき、実際に稼ぎだした利益よりは遥かに少ない給与であっても、社員がさらに努力を重ねて新たな付加価値を産み出していけるのは、定期昇給により将来の賃金の上昇が見込めるからです。 この定期昇給をある日突然、停止ないし廃止するということは、賃金の決定プロセスが急にブラックボックス化してしまうことに他なりません。優秀で先が見込める社員、派手さはなくともコツコツ努力する社員から、必ずやモチベーションが低下するでしょう。 社員全体のやる気を常に高く維持するためにも、定期昇給を正しく理解し、評価の結果や実力差を適正に反映させた昇給運用が求められているのです。 * * * もし、どうしても定期昇給を廃止するのであれば、社員が納得できるように、その社員の生産性に見合った賃金の決め方を確立しなければならないでしょうね。 しかしもともと個人の職務範囲が明瞭でなく、チーム全体としての生産性を求める日本企業の特性や、職種別賃金相場が発達してこなかった日本の事情から考えると、定昇を行なわずに社員の納得性を高め、かつ、これまで以上に高コストにならない賃金施策を考えることは、至難の技だと言っていいかも知れません。 賃金管理研究所のFacebookページはこちらから 宜しかったら「いいね!」を押してくださいね。 弊社所長:弥富拓海のブログもぜひご覧ください。 ⇒ 弥富拓海の「賃金正しい決め方と運用の実務」 賃金管理研究所HPはこちら ⇒ http://www.chingin.jp スポンサーサイト
|
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム
QRコード
![]() |